詳細な研究や関連活動紹介(随時更新していきます)

これまでの研究--背景から--

本格的な紹介の前に、以下はできる限り一般向けに幾何学や多様体の説明から はじめ研究について解説したものです(いつかあるイベントで発表に用いたスライドを元にしており随時修正予定です : 近々

第 12 回関西すうがく徒のつどい

で利用させて頂いたものに色々手を加えたものにする予定です、 改めて聴講し議論して下さった方、それとは別に関連して個別に 議論等してくださった方、ありがとうございます)。多少以下の流れと 似た部分も あるかもしれませんがかなり異なると思われます。

幾何学や多様体からの研究紹介スライド

本格的な研究紹介


(可微分)多様体の位相やより深く可微分構造について観る、知るという、幾何学、数学に於ける基本的で重要な問題に取り組んでいる。多様体を、自身より次元の高くない空間への良い可微分写像、例えば Morse 関数やその特異点論的な自然な一般化である折り目写像、もう少し一般の良い写像を用いて観る、調べるという有名な手法に興味がある。 Morse 関数は、可微分多様体上に必ずしかも豊富にあり、孤立して現れる特異点から多様体のホモロジー群やより深く一部のホモトピーに関する情報がわかる。20 世紀前半には確立された理論で、1950-70 年頃の、 主に自由度の高さゆえに扱いやすい、高次元の多様体の代数的位相幾何学、微分位相幾何学的な理論の発展に貢献した。例えば、Milnor の 7 次元の標準的なものとは異なる可微分多様体としての球面の発見で、多様体が位相的に球面であることを示す部分で使われた。 そして、高次元化として、折り目写像や一般の写像の特異点論的、幾何学的研究、例えば存在するか否か、定義域多様体の幾何学的情報に関する研究が、1950 年代の Thom や Whitney の研究に始まり今に至るまで発展している。この話題は、最近ではデータ科学への応用等流行りの数学の応用や産学連携関係の話題にも登場する。 私はこの話題に関連して研究してきたが、以下がこれまでの研究の一部である。


(1) 折り目写像の適当なクラス --写像は定義域多様体のどんな情報をどうとらえるか--
special generic 写像という折り目写像のクラスがある。これは球面を位相的に特徴づける、 特異点を丁度 2 個有する Morse 関数の高次元版である。標準(単位)球面の自然な射影が special generic 写像の最も簡単な例だが、標準でない球面はある程度高い次元の空間へのこのクラスの写像を有さない。多様体の、可微分構造等の細かい情報に頻繁に影響を与えるクラスであることが、 1990 年代頃に佐伯修氏(九州大)や佐久間一浩氏(近畿大)により明らかにされた。special generic 写像でみられる一連の興味深い現象を踏まえ、これまで具体的で扱いやすい折り目写像のクラスを導入し系統的に調べてきた。 例えば、基本的であると同時に系統的に調べるべきクラスと考え、同心円形折り目写像を、特異点の集合の像が埋め込まれた同心円である折り目写像、標準球面の射影を最も簡単な例として含む自然なクラスとして定義し、写像や多様体の幾何的な性質を系統的に調べた。 折り目写像の特異点全体の集合は定義域多様体の値域の次元より 1 低い部分多様体でそこに制限するとはめこみであるが、このことからしても自然なクラスといえる。special generic 写像でみられる前述のような現象も、7 次元球面上の写像の具体的構成等を通し、新たに捉える等した。一連の成果は、Achievement (研究業績)にある査読有論文、博士論文、プレプリントや研究集会やセミナーで発表している。


(2) 折り目写像の手術--写像の具体的構成と高次元一般次元多様体の写像による表現へ--
最近は例えば、「折り目写像の手術」を導入し研究している。多様体の手術とは、多様体の一部分を除いて同じ多様体または別の多様体で埋め改変するという基本的な操作で、多様体の(微分)位相幾何学で基本的である。そして、折り目写像を似た要領で改変する折り目写像への手術も、基本的で自然な概念であるといえる。写像の手術を系統的に扱う研究は未だ黎明期といえるが、いくつか関連する研究、例えばEliashberg が 1970 年代に折り目写像の存在を考える中で考えたもの、最近だと小林真人氏(秋田大)によるものがある。 特に、小林氏は、研究交流もさせて頂いているが、具体的な写像の構成が簡単な多様体上でも難しいという状況下で、多くの扱いやすい写像を構成して多様体を観、幾何的性質を調べようという基本的な動機のもと、私と近いところでしかし独立に研究を進めている。氏による扱いやすい可微分(折り目)写像の手術を原点に、自ら写像の手術を考案し導入した。この構成的な手法を、単位球面の射影等基本的な折り目写像から繰り返して得られる写像や多様体について調べた。特に、これまで構成した同心円形折り目写像を含み、定義域多様体や写像から逆像を一点につぶすことで得られる商空間として定まり定義域多様体の大枠例えばホモロジー群などをある程度とらえるような、 Reeb 空間という値域と次元の等しい分岐(branched)多様体であるような多面体のホモロジー群やより深い代数的情報であるコホモロジー環が適当な性質をみたす写像の族を、手術によって得た。特に、次元の高さ故観にくい捉えにくい高次元の多様体を具体的な写像で、ホモロジー群やコホモロジー環やより深く基本的古典的 な特性類の情報とともに捉えたことが斬新で重要である。この内容や関連した内容は、Achievement (研究業績) のプレプリント等で発表している。

(3) Reeb グラフや Reeb 空間と可微分写像の特異点論や代数トポロジー・微分トポロジー等
上の折り目写像の手術ほかで、写像の逆像の連結成分からなる空間 Reeb 空間は基本的で重要な位相的対象である。折り目写像やある 程度良い性質を有する、値域の多様体の次元が定義域のそれより低いような可微分写像で、Reeb 空間は値域と次元の等しい多面体となる。 Reeb 空間のトポロジー全般について古く新しい問題を開拓し長らく研究している。最近では、「与えられたグラフを Reeb グラフとするような良い可微分関数を作れるか?」という、Sharko が 本質的な創始者であるような問題に対し、新たな展開を考え生み出しいくつかの論文をAchievement (研究業績) でもあるように査読有雑誌に受理して頂く他新たなプレプリントを多く執筆し続けている。研究集会やセミナーでの発表も行っている。

(4) これまでの研究の微分幾何・代数幾何等への展開。 最近では、例えば (1)(2) の研究で多く経験した具体的な可微分写像多様体の構成で得てきた知識・技術や経験、そして代数トポロジー・微分トポロジーさらには微分幾何・代数幾何等へ広がる幾何学を中心とした数学全般への興味を活かし、意外な方向に進めようともくろんでいる。実際 (3) の研究に関連するもの、 Achievement (研究業績)の"査読有論文" の"5." で単位球面の上の自然な高さ関数をもっとも簡単なものとして含むような実代数的関数と Reeb グラフの族を具体的な状況下で得ることに成功している。現在例えば実代数幾何への展開を進めているところである。


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Last update 2024/4/1